実際に起業した人について、起業に至るまでのプロセスをみると、必ずしも「ワクワク感」を覚えていない場合も多いのが実態です。
たとえば、「勤めていた会社が倒産してしまった」、「会社からリストラされた」などがきっかけで、やむを得ず起業した人がいます。
最近では、「大学を出て就職活動をしたけど、内定がもらえず起業するしかなかった」という若者もいました。
私は、このような、他に仕事が見つからないなどの理由から、仕方なく「起業でもするか」、「起業するしかない」という動機で起業するパターンを、「でもしか起業」と呼んでいます。
「でもしか起業」をした人は、夢に満ち溢れてというよりも、「仕方なく」という後ろ向きな気持ちで起業した人がほとんどです。
多くの場合、事業の内容も、自分の経験でできる範囲の小さな事業や、フランチャイズに加盟しての事業など、限られてしまう傾向にあります。
動機が弱く準備が乏しいため、成功する確率もおのずと低くなります。
しかし、このような「でもしか起業」の人でも、「起業ノート」を活用して準備すれば、起業に対して「熱い思い」を抱けるようになり、「前向き起業」に変えることができるのです。
Aさんは、愛知県で精密機械の製造業を起業して、右肩上がりに業績を伸ばしている経営者です。
もともと東京で大手企業に勤めていましたが、町工場を経営していた父親の会社が倒産してしまいました。
自己破産するなどして、倒産の後処理は終わりましたが、両親は仕事もなくなり、Aさんに助けを求めてきました。
そのためAさんは、年老いた親の面倒をみるために、実家に戻ったのですが、地元で就職しようとしてもなかなかいい仕事が見つからなかったのです。
そこでAさんは、自分で新しい事業を起こすことを考えました。
「どうせ起業するなら儲かる事業をやろう」と決意しました。
ノートに事業のアイデアや資金計画を書きながら、自分の経験と父親が持っているスキルを生かせる事業を考えたのです。
その結果、画期的な機械を発明することに成功し、順調に収益を得られるようになったのです。
Aさんの起業も、サラリーマンを続けるつもりだったのに、親の事情がきっかけで起業するしかなかった「でもしか起業」です。
それでも、ノート使ってビジネスのアイデアを考えて、自分が培ったノウハウに父親のスキルを加えることを思いつき、事業を成功させることができたのです。
起業して事業が軌道に乗るかどうかは、起業の動機に関わらず、いかにしてモチベーションを高めるか、あるいはビジネスのアイデアをブラッシュアップするなど、しっかりとした準備ができるかどうかがカギとなります。
Aさんのように、起業の動機は必ずしも前向きな内容でなかったとしても、ビジネスのアイデアを練り上げるなど、しっかりとした準備をすることによって、モチベーションを高めるとともに成功確率を格段に上げることができます。
「でもしか起業」を「前向き起業」に変えて事業を成功させるためにも、「起業ノート」はとても有効なツールとしての効果を発揮するのです。