起業を実現させるためには、不安の内容を特定して解消するための準備が必要です。
でも、だからといって、不安を100%解消しようと思う必要はありません。
なぜなら、私の経験では、自信満々で起業することは、実はたいへん危険なことだといえるからです。
むしろ、ある程度の不安を抱えているほうが、起業後に事業を軌道に乗せられる可能性が高いものです。
私がこれまで会った起業家のうち約2割は、起業前にとても自信をもっていて、ほとんど不安を感じていないように見える人たちでした。
その自信は、「勤めていた会社で一つの部門を私が成功させた」、「私の技術力は他のどんな企業よりも優れている」、「このビジネスモデルは必ずうまくいく」など、これまでの実績や自負が根拠になっているようです。
ところが、このような自信満々の人たちは、いざ起業してみるとうまくいかず、半年~1年ほどで窮地に陥ってしまうことが少なくありません。
中には、最初の1~2年はうまくいくものの、その成功体験からさらに拡大路線に走ってしまい、過大投資で失敗するというケースも目立ちます。
彼らがつまずいた理由を探ってみると、自信があり過ぎて、起業のための準備が手薄だったという面が見えてきました。
起業後も、とにかくやる気満々で行動力はあるものの、リスクを考えずに突っ走ってしまうのです。
彼らの自信は過信であり、経営に必要な要素のうち一部に関しては優れていたものの、営業力が欠如していたり資金の管理が甘かったりと、他の重要な要素に大きな問題があったということです。
まさに過信してしまって、危機意識が欠如していたのです。
逆に、起業前に不安が残っている人のほうが、起業後も不安の要因に対して事前に対策をとろうとするので、危機への対応能力が高いといえます。
起業に踏み込むためには、ある程度不安を解消することが欠かせません。
しかし、すべての不安をなくす必要はなく、「どうせ起業してからも不安な気持ちは続くのだ」と考えてください。
むしろ起業して事業を継続していくためには、不安は必要なものなのです。
起業後も、うまくいったとしても「これはたまたまラッキーだっただけだ。これで天狗になったら失敗するかもしれない」と、常に自分を戒めつつ経営に取り組むことが、事業継続のために非常に重要なことです。
つまり、起業においては「過信は禁物、不安は必要悪」ということがいえるのです。