安易な共同経営は失敗の元

私が金融機関に勤めていた頃に、先輩から「共同経営は必ず失敗する」と教わりました。

たしかに、創業融資を担当したときに、複数の人が共同で経営するスタイルの企業は行き詰まるケースが多かったことを記憶しています。

ソニーやホンダのように、創業期に共同経営でスタートして大企業に成長した例もありますが、失敗事例のほうが圧倒的に多いというのが実態です。

たとえば、学生時代から仲の良かった二人が共同で起業したものの、ちょっとしたことで意見の食い違いが発生し、結局行き詰まったという事例などです。

共同経営で起業する人の理由は、「資金が不足しているから」、「スキルを補いたい」、「孤独を避けたい」といったものがあげられます。

とくに「資金面が不足しているから」というケースが多く、たとえば3人が100万円ずつ出し合って株式会社でスタートするということがあります。

そのうちの一人が代表取締役に就任しますが、後で何らなの理由で仲違いしたときなどに、出資比率が3分の1しかなければ企業を維持する力はないといえます。

また、「スキルを補いたい」という理由では、互いが相手に依存する関係になり、失敗したときには「なすり合い」になりかねません。

「孤独を避けたい」という理由の人もいますが、起業家になるからには孤独を感じるのは当たり前で、むしろ孤独を楽しめるようになる必要があります。

でも私は、「すべての共同経営はダメ」と言っているわけではなく、意識や能力の高い人にパートナーとして経営に参画してもらう共同経営であれば、むしろ軌道に乗る可能性が高いと思います。

事実、私のクライアントの中には、独りではなく2~3人で起業して順調に業績を伸ばしている企業も多くあります。

そこで、共同経営で成功するためのポイントについて説明します。

まず、必ず誰かが「主たる経営者」となって、出資金額の過半を出すことが重要です。

他の共同経営者(パートナー)は、「従たる経営者」として位置づけします。

これで、組織として意思決定する場合の権限も明確化され、感情的にもめることが少なくなります。

次に、互いの役割分担を明確にして、それぞれの役割について責任を持つという体制が必要です。

たとえば「経営」、「技術」、「営業」と役割を分けて、「経営」を担当する「主たる経営者」が司令塔となって全体をマネジメントします。

もう一つ大切なことは、パートナーを選ぶ際には、経営理念に共感してまい進する意識をもっている人でなければいけません。

何か壁が立ちはだかったときでも、ぶれることなく解決を図ろうとする意欲がある人を選ぶ必要があります。

以上のようなポイントを踏まえて、互いのバックグラウンドやスキルを生かせる「共同経営」を構築できれば、独りで起業するよりも成功確率は高まることでしょう。

また、「スキルを補う」という目的のためなら「共同経営」という形でなくても、外部の人や企業と提携して互いの事業を拡大させるという方法もあります。

私の例をあげると、専門外のサービスが必要なときのために弁護士や税理士などと提携しており、彼らに依頼するという関係を構築しています。

このように、スキルを補ってくれる人を、会社内に抱えるのではなく、外部のビジネスパートナーとして確保すれば、人件費コストが抑えられるとともに事業に幅を持たせることができます。

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