お金に関して意識していただきたい重要なことを、もう一つ説明しておきます。
それは、「お金の回収と支払はシビアに」ということです。
ビジネスにおいては、お金のやり取りに関して厳しさを持たなければいけません。
「お金の回収」というのは、商品やサービスをお客様に売った後にお金をいただくことです。
飲食業や小売業の場合は、その場で現金(またはクレジットカード)でいただきますから問題ありませんが、法人向けサービス業などB2Bのビジネスであれば代金は後でいただくということが少なくありません。
事業を始めるときには、お客様(販売先)と取引の条件を決めることになります。
たとえば「月末締めの翌月末振り込み」といった内容で、この場合5月15日に商品を売っても、代金がもらえるのは6月末となります。
経理処理では、商品やサービスを売って未回収の代金のことを「売掛金」と呼びます。
起業した人が直面するお金のトラブルの一つが、「売掛金」が期日にもらえないという事態です。
ありがたいお客さまですから、商品を買っていただけるととても嬉しいのですが、約束の日に代金を払ってくれないことがあるのです。
そのまま黙っておくと、いつまで経っても支払ってくれないということがあり得ます。
とくに販売先が中小企業の場合は、資金繰りがひっ迫している可能性も否定できません。
きちんとお金をいただけるように、段階的に催促することが重要です。
起業家の中には、「せっかくのお客様なので強く言えない」という人がいます。
しかし、「約束通りお金を払わない人はお客様ではない」くらいの感覚を持っていなければ、自分の資金繰りに影響します。
具体的な催促の方法を説明します。
期日から数日~1週間程度経過しても入金がないようでしたら、電話やメールで「期日が過ぎましたが何かご事情がありましたでしょうか」といった質問をします。
「うっかりしていました」などの返事が来ると思いますが、「それでは恐縮ですが明日までにお願いします」と釘を刺します。
さらに入金がなければ、かなり由々しきことですから、シビアに催促しなければいけません。
未入金が続いた場合は、弁護士などに依頼して法的な手続きを含めた回収手段を検討する必要もあります。
そもそも、このような相手に販売しないように、取引先の信用状況には十分注意しなければなりません。
知らない企業から発注があっても、販売するかどうか慎重に見極めることも重要です。
少しでも不審感を覚えたら、お金を先にもらうことを条件とすべきです。
次に「お金の支払い」についてですが、あなたの事業所が購入したものや経費に関する支払いは期日通りに実施するということです。
前述の「お金の回収」とは逆の立場での話で当たり前のことですね。
支払いが遅れると信用がガタ落ちになってしまって「客ではない」と思われかねません。
ただし、「支払い」は早くすればいいというものではなく、期日までに行えば十分です。
事業経営においては、「回収は早く、支払いは遅く」というのが鉄則です。
なぜなら、回収が遅い中で支払いを早くすると、資金繰りが悪化するからです。
たとえば、売上の回収がまだなのに支払いを今日するとなれば、現金の残高が減ってしまいます。
事業をスタートするときに、仕入先などと取引条件を決める際には、できる限り遅く支払う条件になるよう交渉することが重要です。
とはいっても、普通、創業間もない企業は、相手から見ると信用がないので「先に送金してくれないと商品は送らない」といった条件を申し渡されることも少なくありません。
スタート時はやむを得ませんが、その後信用を積み上げて「月末締め翌月末振り込み」といった「掛け取引」に変更してもらうように交渉する努力が欠かせません。