起業した人に精神的な影響を与える要素としては、お金の問題がもっとも大きいといえます。
そのため、起業したいけど躊躇する人の大半は、お金に関する不安を抱えていることがその理由です。
起業してしばらくの間は、思うように売上が上がらなかったり予想外の出費があったりするので、資金が急激に少なくなってくるものです。
人によっては、とてつもなく大きな不安に襲われて、「お金をどうしよう」ということばかりを考えてしまい、肝心のビジネスに関して正常な判断ができなくなることがあります。
すると、「簡単に儲けることができますよ」などといった誘い文句に乗って失敗するなど、まさに「貧すれば鈍する」のことわざのとおりの現象が起こります。
逆に、うまくいってかなり大きなお金を得ることができた場合も、高級車を買うなど浪費してしまい、ビジネスがおろそかになる人もいます。
こうした起業家は、「お金が多いか少ないかで人生が左右される」と思い込んでいることが原因で、翻弄されてしまっているといえます。
そのために、「お金は魔力をもつ怖いもの」といわれることがありますが、お金は経済活動の手段として使われるものに過ぎず、人の気持ちが魔力を引き寄せてしまうのです。
一方、起業を成功させて事業を長く続けられる経営者は、「金は天下のまわりもの」と気楽に考えており、たとえお金が少なくなっても慌てふためくことなく、冷静にビジネスで収益を上げる方法を考えて実行します。
お金に支配されるのではなく、逆に「お金は自分が支配するもの」と考えて、自分がやりたいビジネスで儲けて、お金がもたらす幸せを享受しています。
「お金の魔力」に飲みこまれないようにするために、サラリーマンから起業家へ転身する前に、お金に対する考え方を変えておくことがとても重要です。
サラリーマンの場合は、毎月の収入はある程度決まっているので、その範囲で、できるだけ節約して使おうとします。
しかし、起業家となれば、お金を節約することだけを考えていては、ビジネスが先細りになってしまいます。
起業したものの廃業してしまう原因の一つは、お金を使わなかったこともあるのです。
収益を確保するためには、商品の仕入や広告宣伝費などに、ある程度のお金を使う必要があります。
もちろん、効果がないものにお金をつぎ込み過ぎると、あっという間になくなってしまいます。
常に効果を計測しながら投資することが重要です。
うまくいけば、投資した金額をはるかに超えるリターンが生まれることがあり、それが事業活動の醍醐味ともいえます。
しかし、リターンを見込んで投資しても、思った通りの効果が出ず「金をドブに捨ててしまった」という結果になることも珍しくありません。
そのような失敗を繰り返しながらも、「投資とリターン」を考えて、リスクをとって事業活動ができる起業家だけが生き残れるのです。