失敗事例から経営にまつわるリスクを学ぶ

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起業家の失敗事例から学ぶ

起業して事業を繁栄させるためには、他の起業家の成功事例を研究するのも有効ですが、失敗事例を知っておくことのほうが、はるかに役に立ちます。

なぜなら、成功事例は、その起業家ならではの強みが源泉になっていることが多いので、他人が真似してもうまくいかないことが多いからです。

一方、失敗事例は、多くの起業家に共通して陥ってしまう可能性のある「落とし穴」を教えてくれます。

私は、金融機関に勤めている間に、約5千名の新しく起業する人への融資を担当しました。

当然ながら、「この人は起業すれば事業が軌道に乗って、借入の返済もきちんとできるだろう」と見込んだ人だけに融資します。

ところが、このような起業家の中には、首尾よく資金調達して事業をスタートできたのに、返済が滞ってしまう人がいました。

早ければ、融資を受けて1年もしないうちに倒産する場合もあります。

融資をした側の金融機関の担当者であった私は、「なぜあの人はうまくいかなかったのだろうか?」と思って、追跡調査をすることがありました。

すると、返済が滞るようになった原因は、次のようなものが代表的なものでした。

  • 業況不振

売り上げが少なく採算がとれない状態です。

  • 資金繰り難

たとえ売り上げは順調だったとしても、売った代金の回収が遅くなるなどして、お金が手元に残っていない状態です。

  • 過大投資

高額の資金を投入して実施した投資ものの、うまくリターンにつながらず、大赤字となってしまったものです。

  • 負債過多

過大投資、資金繰り難、浪費などが原因で借金が膨らみ、返済力を超えたものです。

  • 本業以外での失敗

金融商品への投資など、本業以外で損失を出して資金不足に陥ったものです。

  • お金のトラブル

「従業員が金を使い込んだ」、「損害賠償請求をされた」などのトラブルで、資金が不足してしまったものです。

  • 経営者の健康問題

経営者の病気やケガで、稼働できなくなってしまうことがあります。

これらが借入の返済ができなくなる、ひいては倒産してしまう直接的な原因であり、企業経営において陥る可能性があるリスクといえます。

しかし、実はそうした事態に至ったのには、起業家本人に起因する問題が引き金になっていることが多いものです。

つまり、起業家自身が、危機意識の欠如などから、こうした事態を呼び寄せてしまっているということがあるのです。

たとえば、「業況不振」が起こるのは、経営者によるビジネスモデルのブラッシュアップやマーケティングの工夫が足りなかったと思われます。

「お金のトラブル」も、防止するための方策や、保険に加入しておくなど起こった場合を想定した対応策をとっていなかったことが問題です。

経営においては、経営者のちょっとした油断がきっかけで存亡の危機に直面することが少なくありません。

企業経営における本当の「落とし穴」は、経営者自身が掘ってしまうといっても過言ではないのです。

でも、経営におけるさまざまなリスクを踏まえておけば、致命的な事態になる前に対策を打つことで立ち直ることは可能です。

そのためには、起業の成功事例だけではなく失敗事例にも目を向けて、「反面教師」とすることがとても有効なのです。

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