起業を考えても踏み出せない大きな理由の一つが、「もし事業に失敗したら人生を棒に振ってしまうのではないか」という大きな不安です。
また、「日本では事業で失敗すると再起が難しい」といわれることもあります。
そこで、実際に事業に行き詰まってしまったたらどうなるのか、というお話をしておきたいと思います。
結論からいうと、失敗しても再起することは十分可能です。
もちろん、「楽に再起できる」とはいえません。
借金をどうするかという問題や、支払いができなくなって迷惑をかけた人への肩身の狭い思いなど、たいへんな苦労は避けて通れません。
しかし、自己破産など、法的な手続きをとれば、抱えている負債をリセットする方法もあります。
つまり、事業に失敗しても、まずは最適な方法で事業を畳んで、サラリーマンに戻るなど収入を得る方法を模索すれば、「人生を棒に振る」ようなことにはならないのです。
私が大阪で出会った人は、以前は雑貨小売店を多店舗展開して儲かっている経営者でした。
しかし、景況悪化の影響で次第に売り上げが減少し、赤字続きとなり、借入金を返せないほど厳しい状態になってしまいました。
ついには、会社も経営者個人も自己破産する羽目になったのです。
法的手続きである自己破産をして、裁判所から「免責決定」というのが出されると、それまで背負っていた借金を返済する必要がなくなります。
でもこの人は、自己破産をしてわずか1年後に、再度起業して立ち直りました。
自分がもっていた技術を駆使して、ある機械を売り出したところ、それが飛ぶように売れて再度「儲かる人」に返り咲いたのです。
また、ある建設業を営む経営者は、銀行から高額の借金をして、新事業のための設備投資をしましたが、全く売り上げにつながらず、返済ができなくなりました。
しかし、その企業は本業では利益が出ていたので、大赤字を出している新事業を切り離した別会社をつくり、いわゆる「事業再生」をすることに成功しました。
新事業に関しては、銀行からの借入を踏み倒したことになりますが、銀行がそれ以上執拗に借金を取り立ててくることはなかったのです。
お金がないところに、いくら「金を返せ」と迫っても返済してもらうことは無理だからです。
このように、起業してうまくいかず借金が返せなくなっても、再起することは十分可能なので、人生を諦める必要はないということです。
昔のドラマのように、怖い人が来て「金返せコラ」と迫ってくるということもほとんどありません。
「ビジネス=人生のすべて」と重く捉える過ぎると、失敗したときに精神的な悪影響が過大なものとなります。
ビジネスはゲームと同じようなものです。
うまくいって勝つことがあれば、負けることもあります。
万一、ビジネスというゲームに負けたなら、他のゲームをするか、あるいはやめてしまえばいいことです。
だからといって私は、「失敗しても問題ないから積極的に起業しましょう」というつもりは毛頭ありません。
失敗したときの苦労はたいへんだからです。
起業前に、「いかにして失敗しないようにするか」という観点で、しっかりと準備をしていただきたいと思います。